平成27年度研究成果最終報告会および懇親会

  画像平成28年3月2日(水)の13:00より、近畿大学農学部311教室にて、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「環境調和を志向した革新的植物アグリバイオ技術の統合型研究拠点の形成」の27年度研究成果最終報告会を開催いたしました。関係者54名が集まり、研究成果の報告および活発な討論がなされました。   テーマ1担当の川崎教授が最初に報告いたしました。植物のキチンシグナルを通した病原菌感染に対する応答機構についてさらに新たな知見が得られているようです。とりわけ、シグナル受容体キナーゼCERK1とMAPKカスケード間のシグナル伝達を仲介する分子の同定は際立った研究成果の一つです。次に、テーマ1担当の重岡教授の研究グループは、葉緑体由来活性酸素シグナルを介した防御システム、シロイヌナズナのアスコルビン酸再生系、さらには植物由来グルタチオンペルオキシダーゼの機能解析などの最新情報を提供していただきました。同じくテーマ1担当の内海教授は、植物病原菌の2成分制御系において機能しているコネクター分子SafAとPhoQセンサードメインとの相互作用を、NMR分光法によって解析し、またヒスチジンキナーゼ阻害剤Signermycin, Waldiomycinの阻害作用部位をNMRによって明らかにしました。 画像報告会の後半はテーマ2担当の3名の教授からの報告でした。まず深溝教授は、新規に合成されたキトビオシルモラノリンがFamily GH19キチナーゼ阻害剤として働くこと、また植物キチナーゼの結晶構造と糖転移反応触媒能との関係について詳細な解析を行いました。さらに新規に発見されたキトサン結合モジュールのX線結晶構造およびNMR溶液構造が明らかにされ、キトサン認識機構を解明しました。次に、テーマ2担当の松田教授からは、昨年度に引き続いて除虫菊中のピレスリン生合成に関わるリパーゼの結晶構造およびその阻害剤の合成について、また、糸状菌が生産する昆虫制御物質の探索について報告されました。いずれの研究テーマにおいてもさらなる進展がみられ、これらの知見がアグリバイオ技術として応用される日も近づいていると確信できました。最後は、森山教授が、各種植物汎アレルゲンに対する抗体の作製と、これらを用いた変動解析やアレルゲン性評価について、また、植物由来嗜好性成分であるニコチンの血管壁に対する影響について、さらには、エラグ酸の脂肪細胞、肝細胞、小腸細胞に対する影響について報告していただきました。以上のような基礎的知見は、植物を中心とした環境の調和をめざしたアグリバイオ技術の新たな方策を立案することに大きく貢献するものと確信する次第です。この報告会の要旨集はこちらをクリックしてください。
  夜は西大寺の「彩どり正よし」にて、教員、プロジェクト研究員、院生を交えて楽しい懇親会の一時を過ごしました。以上をもちまして、5年間にわたるプロジェクト研究を終了することになります。このような素晴らしい研究成果を起点にして、新たなプロジェクト研究がこの近畿大学大学院農学研究科において展開されていくことを心から期待する次第です。皆さん、この5年間、ご協力ありがとうございました。

プロジェクト代表
深溝 慶