平成24年度研究成果報告会および懇親会

 平成25年3月4日(月)の13:00より、近畿大学農学部第一会議室にて、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「環境調和を志向した革新的植物アグリバイオ技術の統合型研究拠点の形成」の 24年度研究成果報告会を開催いたしました。関係者52名が集まり、研究成果の報告および活発な討論がなされました。 画像 昨年同様、テーマ1を担当する3名の先生方から報告が始まりました。川ア教授からはCell Host & Microbe誌に掲載された植物の病原菌感染に対する免疫応答のメカニズムに関して報告がなされ、 また、重岡教授からは植物中のH2O2消去系の酵素やNADPH 加水分解酵素などの酸化的ストレスに対する応答に関する詳細な解析について話していただきました。ともに植物分子生物学の最前線をいく研究成果であり、 このプロジェクトを大きく前進させるものと確信します。一方、イネ苗立枯病菌の病原性因子の産生制御機構や白菜軟腐病菌の病原性を制御する二成分制御系の解析について内海教授から報告があり、 これらの病害に対する新規の防除戦略も近い将来に確立されるものと期待できます。 休憩を挟んだ後、テーマ2の方の報告がなされました。植物キチン加水分解酵素とその標的オリゴ糖との複合体結晶構造が決定され、 NMR法によって溶液中でもそのような複合体構造が維持されていることが深溝教授のグループによって明らかにされました。このような植物キチン加水分解酵素も遺伝子変異によって転移酵素へと機能変換が可能であるとの報告もなされ、 新たな酵素利用方策の確立へとつながるものと思われます。松田教授からは、環境に優しい昆虫制御技術の基盤を構築することを目的として、ピレスリンをはじめとする植物のテルペン類がターゲットとする昆虫の神経イオンチャネルの制御について報告し ていただきました。 画像 このような神経伝達制御系の分子基盤が明らかになれば、有効な昆虫制御技術の開発につながるものと思われます。最後は、森山准教授のグループによって、植物タンパク質のアレルゲン変動解析およびアレルゲン性評価方法の改良が行われ、 またザクロより得られたエラグ酸に肝細胞からのアポリポプロテインB分泌抑制効果や肝臓における中性脂質蓄積抑制効果があることが報告されました。以上のような研究成果の中から、植物を中心とした環境の調和を図るための新たな方策をこれから考案していこうと考えています。 報告会の要旨集はこちらをクリックしてください。
夜は奈良の「つのふり」にて、楽しい懇親会の一時を過ごしました。学科研究室の壁を越えた教員および大学院生たちが互いに交流し、実に有意義な時間を過ごしました。来年度はさらに多くの皆さんが参加していただければと思っております。

プロジェクト代表
深溝 慶