研究目的

本プロジェクトの最大かつ最も重要な目的はマツタケの人工栽培はどのようにしたら成功するのかという問題を、従来のきのこ栽培法の開発でとられていた、“経験とノウハウ”によってではなく、科学的な視点からきのこの生理を解明することでマツタケの生態を理解し、その結果として栽培化に結びつけることにある.そのためにはきのこが子実体を形成する際の著しい形態の変化にはどのような生理的・生化学的変化が伴うのかを明らかにする必要があるが、現在、そういった解析に必要な全ゲノムやタンパク質のデータベースがエノキタケ、ブナシメジ、エリンギなど栽培技術や学術的な知見がある程度蓄積しているきのこですら断片的にしか存在しないため、詳細な検討を進めることができない.

本研究テーマでは、きのこ類微生物研究におけるこういった状況を打破し、現在生物の生化学研究において一般的な研究手法となったゲノミクス、プロテオミクスなどの手法をきのこ類微生物の研究手法として取り入れ、研究のスピードアップを図るために、シイタケやマツタケなど一部のきのこでしか解読されていないゲノムデータベースを新規に構築する.

ゲノムデータベースの構築と並行して、これまでにブナシメジやシイタケなどで子実体形成への関与が示唆されているタンパク質やマツタケにおいてこれまでに知見が蓄積しているタンパク質について優先的に構造解析を行い、ゲノム情報と併せてデータベース化を進める.これらのデータベース化の作業がある程度進行した段階で、ラボスケールから実際の栽培スケールまでの様々なスケールで培養・栽培を行った菌糸体・子実体を用いて発現している遺伝子やタンパク質の網羅的な解析を進めることで、菌糸の生育や子実体の形成にとって重要な要素を解明する.また、栽培施設は実際に出荷できる品質のきのこを栽培できるグレードの施設を導入予定であるため、栽培施設での栽培試験を通じて優れた栽培技術を有する研究者の育成を目指すとともに生産したきのこを利用したマーケティング戦略の検証も進める.

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