研究テーマ

Research Theme

1.マツタケの人工栽培に関する研究

マツタケは日本で最も高価な食用きのこですが、近年その生産量は年々減少しています。
マツタケをはじめとする菌根菌は樹木と共生しており、木材を分解し生育の栄養源とする能力が低いことが知られています。
現在、マツタケには腐生性があるといわれていますが、その能力は低く、マツタケはセルロースやデンプンなどの高分子多糖から効率よくグルコースを供給するルートを持たないとされてきました。
私たちの研究室では、マツタケを大麦を主固体培地で培養することにより、従来よりもはやい速度で菌糸成長できることを見出し、その際に従来非常に弱いといわれてきた、高分子多糖を分解するための酵素を生産することを明らかにしました。

また、同様の培地を用いることで、大量の菌糸体を短期間で調製できる技術を開発し、現在子実体発生に向けた刺激の検討などを行っています。

2.きのこの子実体形成機構の解明

一般に、栄養分を十分に蓄えた栄養成長期の菌糸体に、温度や光などの刺激を与えると、生殖成長に移行し、子実体の形成が始まります。
しかしながら、栄養菌糸体から子実体原基形成の機構はほとんど解明されていません。
私たちの研究室では、これまでにプロテアーゼの阻害剤を添加してきのこを培養すると子実体の形成が促進もしくは阻害されることを明らかにしており、プロテアーゼが子実体形成機構の解明のカギとなると考え、検討を進めています。

また、トキイロヒラタケ(Pleurotus salmoneostramineus L.Vass)の特徴的なピンク色はタンパク質であり、子実体原基形成の際に急激に遺伝子の発現が上昇しますが、本タンパク質のアミノ酸配列は、これまでに知られていない配列であることを発見しました。

3.新規食用きのこの栽培方法の確立

近畿大学農学部には小規模農家に匹敵する規模のきのこ栽培施設があり、実際にきのこ農家等で行われているのと同様のきのこ栽培を行うことが出来ます。こういった施設を研究目的で有している大学は日本にはほとんどなく、きのこ産業と密接に連携した栽培法の検討・開発が可能であり、現在、様々な食用きのこの栽培について研究しています。

きのこ栽培施設での栽培例
きのこ栽培施設での栽培例

4.微生物の醗酵能を利用した食品の機能性強化

酵母によるアルコール発酵や乳酸菌による乳酸発酵は古くから利用されている発酵技術であり、現在も同様の技術を利用して製造された多くの食品が消費されています。
一方、こういった発酵工程に利用されている微生物の中には、近年GABAなどの機能性物質を生産するものや、血栓を溶解する酵素を分泌するものも報告されるようになってきました。
私たちは、このような発酵に用いられている微生物の中から発酵中にGABAや血栓溶解酵素などを生産する微生物を検索し、実際の食品製造工程に用いることで従来の食品よりも機能性の高い食品を製造する方法について研究しています。

5.機能性健康米に関する研究

精米方法を検討しなおすことで、玄米が持つ種々の機能性成分を残して精米する方法を幸南食糧株式会社とともに開発いたしました。
この精米方法を用いて精米した米は、通常の白米と同様の炊きあがり、食味を有しながら、ビタミンEなどの成分が通常の白米よりも多く残留しています。
現在は、機能性健康米協会(http://kenkoumai.net/)と連携して、米の健康機能性についての研究を進めています。