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新しい視点で魚を科学する 水産生物学研究室

性分化機構の研究Research of sex-differentiation Developmental biology Manipulation for Fish breeding

魚類の性分化のしくみを探求し性統御を実現する

魚類の卵割様式はほとんどが盤割。これは、卵黄が極めて多く、細胞質は動物極側に集まって胚盤をつくり、それが細胞分裂を繰り返して、やがて魚体を形成します。その過程は魚類全体ではとてもよく似ていますが、個々には種ごとに微妙に違っています。それもそのはず、魚類は脊椎動物の底辺をなし、多種多様に富んでいます。同じ魚類であっても、アミアやチョウザメなどの古代魚のようにほとんどカエルのような不等割に近い分裂をするものもいれば、板鰓類のサメやエイのようにそれらの中間の卵割様式をとるものもいます。近縁の仲間でも、コイとフナや、マサバとクロマグロにもどこか違いがあるでしょう。それらの発生過程で起こる様々なイベントの種間での違いは、各種で細胞工学的手法を用いて品種改良や系統保存技術を開発するのに重要な道しるべとなります。


魚類における性分化機構の解明 ー性の統御−活動報告写真








 多くの魚種では同じ年齢でも雌雄で大きさが違うことが多く、水産の世界では商品価値が大きく異なります。このホンモロコも雌の方が大きくなり、しかも発達した卵巣を持つことから「子持ちモロコ」として高値で取引きされます。ヒラメやティラピアも雌雄で大きさが異なることはよく知られていますし、トラフグでは白子がもてはやされます。基本的に魚類の性は先天的に決まっていますが、ほとんどの魚種では、孵化直後にはまだ卵巣にも精巣にも分化していない状態で、その後に遺伝的性にしたがって雌あるいは雄になるように、卵巣や精巣を分化させますが、ほとんどの魚類では性染色体が形態的に判別できません。その性決定様式と機構、性分化機構などのメカニズムは、魚種ごとにかなり異なっていて、なかには孵化後に経験する環境によって性が可塑的に変動する魚種もあります。


温度依存型性分化機構の解明 −ホンモロコの性分化ー

ホンモロコはXY/ XX型(雄へテロ型)の性決定様式を持つものと推定されていますが,いまだ性決定様式は確定されていません。その後の分析では,育てられるこどもの性は群れごとにそれぞれに異なり、それらが性分化期に至るまでに経験する水温環境に影響されることが分かっています。このことから、本種が温度依存型性決定様式 (TSD) を持つと考えれられるようになりました。当研究室ではその分化メカニズムを遺伝子発現解析によって検討しています。経験する温度をかえると性分化に関与する遺伝子の発現に変化が生じることが分かってきました。現在、これらが卵巣や精巣を分化させる方向にどのように関わるのかを調べています。



小林 徹 toru kobayasHI

水産生物学研究室
Laboratory forAaquatic Biology
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