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近畿大学 農学部 農業生産科学科

ナミビアSATRPESプロジェクト 現地での活動概要access

※Friend of SATREPS内のコミュニティ記事(詳しくはこちら)より抜粋)

(画像はクリックすると大きくなります。)

【1年次の活動概要】



・ 2012/6/29 フィールドデーの開催


2012年6月29日にナミビア大学構内圃場にて、我々のプロジェクトの成果を住民や研究者、政府関係者などに公開するフィールドデーを開催しました。
当日は、州政府の議員やチーフをはじめ、多くの方にご参加いただきました。フィールドデーが開催された時期は乾季のはじめで、昨雨季に作付した農作物の収穫が終わった時期にあたります。フィールドデーでは、新しく導入を試みているイネの収穫量について報告がされ、本地域での稲栽培や新たな農法導入の可能性、課題について議論が行われました。昨雨季のイネの収量は思っていた以上によく、参加者はイネ栽培の可能性や栽培方法などを熱心に聞いていたようです。

  


・ 2012/9/4 JCC会議の開催


2012年9月4日にナミビア大学にて、Joint Coordination Committee (JCC)会議およびキックオフ・ミーティングを開催いたしました。本会議は、ナミビア側と日本側のプロジェクト関係者が一堂に会し、プロジェクトの進捗状況や課題について議論する場として定期的に開催する会議です。今回は、カウンターパートであるナミビア大学の先生方、オブザーバーであるナミビア政府関係者の方々などを含め、計33名(ナミビア人関係者20名、日本人関係者13名)が参加され、活発な議論が交わされました。

  


・ 2012/9月 開発班現地調査 ワークショップの開催
2012年9月5日~7日にかけて、開発班の現地調査を行いました。9月5日にオハイング村で昨年稲作を開始した農家を対象としたフォーカス・グループ・ディスカッションを実施し、9月6日にオシテヤテモ村で数年前から稲作を行ってきた農家への聞き取り調査、9月7日にオナムディンディ村で昨年稲作を開始した農家を対象としたフォーカス・グループ・ディスカッションを実施しました。参加された農家の意識は高く、新しい栽培技術に対する質問や次の雨季に新しい農法を開始する時期などについて、農家側から積極的な質問がありました。詳細は追って紹介いたします。
 
ナミビア大学での打ち合わせ
   
オナムディンディ村の様子



・ 2012/12月~ 稲作開始


プロジェクトサイトのナミビア大学では、実験と普及を目的とした稲作が今季もスタートしました。ナミビアでは、数年前に日本の援助が来るまで、稲作はほとんど行われていませんでした。現地の主食は乾燥地でも育つトウジンビエ(ヒエの一種)です。しかし、輸入米の需要が増え、米の自給に対する要望が高まっていることと、降水量が増加し、トウジンビエの生育に大きな被害が生じているため、ナミビア大学と近畿大学などが協力し、数年前から稲作の実験を進めてきました。SATREPSプロジェクトでは、それをさらにすすめ、イネとヒエの混作という新しい農法を実験しています。

  
写真はイネだけを栽培する実験用水田の様子です。近くの農家の人や大学のスタッフが田植えをやっています。普段、魚をとるために水の中にはしょっちゅう入っていますが、腰をかがめてイネを植えるのは、最初は大変なようです。でも、みんなワイワイ楽しそうでした。

・ 2013/2月~ 旱魃の発生



ナミビアは雨季の最中です。例年ならば、数日に一度スコールのような雨に見舞われ、洪水がやってくるはずなのですが・・、今年は全然雨が降りません。誰かと会うと、「明日は降るかも」「雲がでてきたのでそろそろかな」と1月上旬からそんな話をしているのですが、一向に雨は来ず、だんだん今年は深刻な旱魃年になる様子であることがわかってきました・・。希望的な話題はだんだん少なくなり、どうやって今年食べ物を調達するかという深刻な話になりつつあります。
この地域の主作物であるトウジンビエは、作物の中では最も乾燥に強い性質があります。ナミビアでは、ここ数年雨の多い年が続いていて、水による湿害によってトウジンビエが枯れる傾向があります。しかし、今年は乾燥でトウジンビエが枯れています。少々の乾燥ではビクともしないトウジンビエがこんなにダメージを受けているのは初めて見ました。
まだ雨がこれから降る可能性もありますが、もしこのまま雨が降らないと、農家の多くが今年食べる主食をほとんど獲得できないかもしれません。また、家畜の餌となる草もないので、家畜も大きな被害を受ける可能性が高まっています。新聞の報道では、政府も旱魃被害を軽減するため実態把握と対策を検討し始めたようです。一方、農家は農家で、こうした事態に何も備えていないわけではありません。人々は穀物が豊作だった年にそれらを売らず、こうした非常時のために備蓄しています。また、各農家は物々交換などを通じた多様な食料獲得ルートをもっている場合が多く、あらゆる手段を駆使して危機的な状況を乗り越えていきます。しかし、そんなことになる前に、雨が降ってくれればよいのですが・・
     
 トウジンビエ畑。例年なら既に穂がでているはず・・  乾燥にやられるトウジンビエ 季節湿地。イネはかろうじて生き残っている。


・ 2013/3/12 フィールドデイの開催



3月12日に“フィールドデイ(Field Day)”をナミビア大学オゴンゴ校で開催いたしました。これは、ナミビアSATREPSプロジェクトの内容やプロジェクトで検討をすすめている新しい農法を農家の方々に紹介するイベントです。ナミビア農水省副大臣をはじめ、北部地域の知事、チーフ、農業普及員が参加し、また大勢の農家の方々や学生が参加され、最終的に462人になりました。

初めに来賓の方々の挨拶があったのち、大学内の圃場に移動し、実験を行っている傾斜圃場や水田を公開しました。そして、圃場の前で、プロジェクトの目的や実験の内容、実際に植わっている作物の状態やイネの植え方、脱穀や精米の方法、大学で使用している農業機械の説明をしました。

今年、深刻な干ばつとなったナミビアでは、在来作物であるトウジンビエやプロジェクトのすすめるイネに被害が生じており、来賓の方々のスピーチでも我々のすすめる洪水―干ばつ対応農法の開発に期待をよせる声が聞かれました。また、イネを初めて見た人も多かったようで、総合討論では、種子や苗の植え方などに関する具体的な質問がたくさんよせられました。洪水や干ばつの被害を最小限にとどめるような農業のあり方を農家の人たちと一緒に考えるよい機会になりました。
フィールデイの様子(荒木千絵撮影) 千歯こきによる脱穀方法の紹介(荒木千絵撮影)  精米機の紹介(荒木千絵撮影)


・ 2013/3/13 JCC会議の開催



3月13日に、JCC(Joint Coordination Conference)会議をナミビア大学北部校で開催いたしました(参加者39名、うちナミビア側23名)。この会議は、プロジェクト関係者の間で成果と進捗状況を共有し、今後の方針を決める重要なものです。

今回は、作物班、開発班、水文班のナミビア側代表者が各班の進捗状況を紹介しました。また、討論では、収穫量の解釈など各班の研究内容に関する活発な議論とともに、農水省との連携方法など今後の運営体制についての議論が行われました。
 
作物班の報告では、ナミビア側で実施した、大学内傾斜圃場での作物生育実験の進捗状況を中心に、イネの品種選抜試験、種子増殖、農家圃場での作物生育実験の状況が発表され、また、日本側で近畿大学と滋賀県立大学において実施された傾斜圃場実験やポット試験、ライシメーター試験の内容が紹介されました。

開発班の報告では、300軒ほどの農家を対象としたベースライン調査(インタビュー)の進捗状況が提示され、また3月に実施された20軒ほどの農家を対象にしたワークショップの結果やGPS調査の内容が紹介されました。水文班からは、北部地域で25か所に設置された雨量計のデータや傾斜圃場に設置されたボーエン比測定システムのデータ取得状況が報告されました。今後、各班から提示される結果をどのようにまとめ、新しい農法をつくっていくかが多きな挑戦となります。
会議の様子 プロジェクト代表 ムワンデメレ教授 プロジェクトリーダー 飯嶋教授


・ 2013/4月 旱魃のナミビア



 通常だとまとまった雨がふる1月から3月にほとんど雨が降らず、収穫が心配されましたが、例年よりだいぶ収量は落ちるようですが、それなりにヒエの収穫に漕ぎ着けられそうです。すでに幕を開けている鳥達との長い闘い次第ですが・・

 農家の畑をみにいくと、今年はスイカの健闘ぶりが目につきます。たぶん、例年トウジンビエやササゲなどと混作され、2m近く育つトウジンビエの根元でひそかに、たくさんできていたのでしょうが、今年はヒエがだめだったので目立っているのかもしれません。さすが、カラハリ砂漠原産というだけあって乾燥には強いです。

 これまで、飢饉のときにどうやって過ごしてきたのか?ということを農家の方々に聞いて回っているのですが、その一つに「スイカを食べた」という話をよく聞きます。生のスイカもそうですが、むしろ種が大事で、これを臼と杵で潰して油をだし、それをトウジンビエの粉と混ぜて食べたり、あるいは種だけを炒って“おかず”として食べたのだとか。あと、葉っぱも食べたということです。近年ではそのような食べ方はほとんど見られませんが、旱魃のときに頼りになる救荒食的な存在のようです。




・ 2013/5/8 フィールドデイ



先ほど、ナミビアSATREPSの"フィールドデイ(Rice Harvesting & Soil Sample Collection Demonstration)"をナミビア大学で開催しました。これは、ナミビア国の農業省に所属する農業普及員を対象とした説明会です。今雨季のイネやヒエの実験の様子や収穫方法の説明を行いました。

参加者は44名(農業普及員27名、ナミビア大学講師4名、プロジェクトスタッフ7名、JICA&JOCVスタッフ4名、その他2名)で、予想以上に多くの政府関係者の方が来てくれました。

最初に大学内の圃場を案内し、イネとヒエの混作の状況をみてもらいました。イネは穂がでて収穫間近です。その後、参加者に鎌を渡し、収穫の体験、脱穀機の体験をしてもらいました。同地に赴任されている青年海外協力隊の増本雅也さんにこれらのデモストレーションをしていただきました。その後、農業に関する調査技術を現地に移転するため、土壌の調査手法に関するデモストレーションを行いました。こちらは、JICA短期専門家として現地を訪れている近畿大学の渡邉芳倫さんに実施していただきました。

実際のイネを前にしているせいか、参加者からは味に関する質問が多々でました・・みんな積極的に質問をし、コメ作りに挑戦したいという声もたくさん聞かれたので、次の雨季にはさらなる広がりが期待できそうです。





・ 2013/5月 地下水のサンプリング等



ゴールデンウィークの連休中、本プロジェクト代表の飯嶋先生(近大)をはじめ、泉先生(滋賀県立大)、山根先生(近大)、渡邉さん(近大)ら日本側の先生方がナミビアにいらっしゃいました。ナミビア大学のペトルス氏とともに大学圃場の収量調査や現地農家の収穫状況の視察、土壌調査などを行いました。

3月末に季節はずれの雨が降った地域があり、農家圃場を設置しているある農家では、湿地に水がたまり、試験的に作付したイネが穂をつけていました(写真左)。

今年は地域全体に旱魃様相ではあったものの、車で広く回ってみると、北東部では湿地に水がたまっていて、地域のなかで雨の降り方にかなりのばらつきがあったことがわかりました。各地で、「今年のような旱魃が前回いつ起こったのか?」ということを聞いて回っていると、だいたい80年代後半の旱魃と同じようだという話がよくでてきました。農家の方々は飼っているウシやヤギの餌をどうするかなど、これからが大変です・・

水が干上がった湿地で地下水の調査を試験的に行いました(写真中)。地面に採土機で穴をあけ、穴の開いた直径8cm,長さ8mの塩ビパイプ埋め込んで、中にたまった水をポンプで汲み出します。地表面がものすごく乾いてるので、まず水はでないだろうとひそかに思っていましたが、数日後には700ccくらいの水が溜まっていました。3mくらいでこれだけ水がたまっているとは、意外でした・・
イネを植えた湿地に水があるのをみつけて喜ぶ飯嶋教授。奥は青年海外協力隊の増本氏  地下水採取のために採土機を操作中。
左から山根講師、泉准教授、現地技官のShou氏、渡邉研究員、ペトルス講師。
途中で機械のトラブルがあり、予想以上に時間がかかりました・・
 試験用人工湿地の設置について議論中。山根講師の麦わら帽子はその後現地で評判になっていました。

気象観測機器の設置

水環境を保全しつつ新農法を導入するためには、現地の水環境や新農法を導入した際に水環境がどのように変化するのかを定量的に把握する必要があります。プロジェクトの水文班では、そうした点を調査するために、様々な機材をナミビア
北部の地域に設置しています。

その一つは、ボーエン比観測装置で、ナミビア大学の傾斜圃場に設置されています。この観測装置により、イネなどの作物を植えた際に、水収支がどのように変わるかを明らかにすることができます。

また、この地域に降る雨の量を測るため、数十か所に雨量計を設置してあります。雨量計は雨が降ると自動的に降った量を測定し、機械のなかに記録していきます。


ボーエン比観測機器 観測機器の設置 雨量計の設置