これから訪れる食糧不足とすでに進行している環境汚染に対応するため、育種工学研究室ではゴマ、キノコ、サツマイモなどを研究材料に、健康食品としての機能性と生産性の向上を目指した育種を展開している。研究では遺伝学に加え、細胞生物学、生化学、分子生物学的手法を用い、有用な新品種を作出する。 具体的には、 1)ゴマを用いた研究ではゴマ種子において高品質、多収量のゴマ油を貯える新品種を作出する。ゴマ油の貯蔵細胞小器官であるオイルボディのフォーカスドプロテオミクスによる構成タンパク質の情報から、ゴマ油の多収量の品種を作出する。さらに、ゴマ種子は他の油糧作物に比して、オレイン酸の含有量は高いが、よりオレイン酸の含有量を高めることにより、高品質の品種を作出する。したがって、研究領域は小胞体からオイルボディに至るゴマ油の合成、貯蔵及びオイルボディからグリオキシソームに至るゴマ油の分解までをカバーし、新品種の作出に繋げる。 2)キノコを用いた研究では、木材腐朽菌であるシイタケのリグニン分解活性能を改変することにより、短期栽培型、多収性の新品種を作出する。シイタケ菌糸体の培養系においてリグニン分解に関与する物質、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、リグニンペルオキシダーゼ等を特定し、これらの高発現株を作出する。シイタケ優良株であると同時に環境浄化株として応用する。さらに、育種的に重要な量的遺伝形質座を含む染色体地図の作成と有用遺伝子のマッピングを行い、F1ハイブリッド品種の特性である雑種強勢のしくみを解析する。 |