ナミビア国半乾燥地域におけるトウジンビエ栽培体系下での

氾濫水利用型粗放稲作の導入

Introduction of extensive rice cultivation harmonized with the traditional pearl millet cropping in flood plane of semi-arid region of northern Namibia

 

アフリカ南西部に位置するナミビア国は、国土の大半が乾燥地に属する砂漠国である。現住民の大半が生活する北部地域には、雨季になると隣国のアンゴラ高原からの氾濫水が流れ込み、総計約70haにおよぶ広大な湿地帯が広がる。しかし下流域にはエト−シャ国立公園があるため、灌漑施設の設置等の大規模な環境改変を伴う湿地帯利用は許されておらず、現状では放牧地として利用されているに過ぎない。本研究は、この季節性湿地帯の基本的な水環境を改変せずに、あるがままの湿地帯に適合する稲品種を導入し、さらに当地の貧農によるトウジンビエ栽培に融和するような稲栽培体系を提案することを目的とする。

 

本研究は科学研究費補助金(基盤研究B海外学術 2004年度〜2007年度)による助成を受け、ナミビア大学農学部、農水省国際農林水産業研究センタ−、滋賀県立大学、などに所属する研究者との共同研究として実施した。2008年度からは、科学研究費補助金(基盤研究A海外学術 2008年度〜2012年度予定)研究として、とくに半乾燥地の水環境が水田化によりどの程度変化するのかを水文気象学を専門とする連携研究者(名古屋大学地球水環境研究センタ−と大学院生命農学研究科)との共同研究により明らかにすることを目指す。2009年度からは、トウジンビエ文化圏への稲栽培の導入に伴う農村社会の変容やトウジンビエ作と稲作の作業体系の確立を、人文社会学を専門とする連携研究者(名古屋大学国際開発研究科、京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)との共同研究により実施する予定である。今後、現地で立ち上げた稲作共同組合に対して、彼らが活用できる日本古来の伝統農具試作機を提供することにより、現場での産業化も進めていきたい。

 

研究1 異種植物間の水の競合・補完関係:半乾燥地におけるトウジンビエ−マメ科作物間作栽培における作物の水利用

 

キ−ワ−ド:安定同位体法による水と窒素吸収評価、間作作物間の補完と競合関係、トウジンビエの深層水利用能と水利用効率、硬盤層による根域制限と乾燥ストレス、不耕起栽培条件下における間作栽培

水素安定同位体を用いた研究例


 

研究2 グラベリマ稲、オリザ稲、ネリカ稲のストレス耐性種間比較

キ−ワ−ド:耐塩性、耐旱性、機械的ストレス耐性、土壌養分不足

 

研究3 ナミビア国季節性湿地帯の水位変動と土壌の化学性

キ−ワ−ド:ナミビア国の農業生産実態調査、北部オシャナ地域の水環境と土壌

 

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